膵臓がんの外科的治療では、手術件数が多い名医ほど治療経過が良い!【米国論文】

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[投稿日] '17/07/28 [最終更新日] '18/03/18 1,150views
膵臓がんの外科的治療では、手術件数が多い名医ほど治療経過が良い!【米国論文】

膵臓がんとは

膵臓は食物の消化を助ける「膵液」と、血糖値の調節に必要な「インスリン」や「グルカゴン」と言ったホルモンを作るという役割を果たしています。膵臓がんは文字通り膵臓にできるがんのことですが、そのほとんどは膵管と呼ばれる膵液の通り道にできると言われています。

 

膵臓がんの症状

膵臓は十二指腸に接している「膵頭部」と、膵臓の真ん中である「膵体部」、十二指腸から離れた部位である「膵尾部」の3つに分けられます。膵臓は沈黙の臓器と呼ばれていることからもわかるとおり、早期の膵臓がんでは特徴的な症状は現れにくいです。そのため、早期発見が難しいがんであると言われています。ただし、膵頭部にがんができた場合には十二指腸や胆管を圧迫するため消化不良や黄疸と言った症状が現れることがあります。

 

膵臓がんの治療

膵臓がんの主な治療方法として、外科的治療(手術)、抗がん剤治療、放射線治療の3つが挙げられます。がんの範囲や全身の状態などを考慮して、治療方法が選択されます。

外科的治療

がんを含めて膵臓と周囲のリンパ節などを切除する手術を行います。手術の適応があるかどうかは、肝臓や肺など他の臓器へ転移していないか、あるいは重要な臓器に栄養を運ぶ太い血管にがんが広がっていないか、といったことを基準に判断されます。

抗がん剤治療

他の臓器に転移があるなど手術でがんを取り除くことが困難な場合、あるいは手術後に膵臓がんが再発した場合には、抗がん剤治療が選択されます。また、膵臓がんを手術で取り除いた場合であっても、一定期間抗がん剤の治療を受けると生存期間が延長することがわかっているため、手術後の抗がん剤治療(術後補助化学療法)も一般的に行われるようになりました。

放射線治療

高エネルギーの放射線を膵がんにあててがんの増殖を抑制する治療です。膵臓がんが主要な血管を巻き込んでいたりして手術適応がない場合に選択されます。化学療法と組み合わせることで放射線の効果を高めることが期待できるため、抗がん剤と併用されることも多いです。

 

膵臓切除術の手術件数と治療成績との関係を調べた論文

今回ご紹介する論文では、膵臓がんをはじめとする膵臓切除術の手術件数と治療経過に関係性があるかどうかが検討されています。本研究では、アメリカ・テキサス州の公的医療保険制度(Texas Medicare)に集積されたデータのうち、膵臓切除術を受けた66歳以上の患者を対象としており、2000 年から2012年までの13年間に行われた2,453件の手術について調査が行われました。

また、本研究では1年間に医師が執刀した膵臓切除術の手術件数に基づき、年間手術件数が多い医師(年間4件以上)と少ない医師(年間4件未満)の2つのグループに分類し、膵臓切除術が行われてから30日間の死亡率と30日間の合併症発症率を主要な評価項目として比較検討されています。

また1施設あたりの手術件数についても、年間手術件数が多い病院(11件以上)と少ない病院(11件未満)の2つのグループに分類され、同様の検討が行われています。

 

膵臓切除術では、年間手術件数が多い医師・病院ほど治療効果が高い

分析の結果、膵臓切除術の年間手術件数が多い医師に執刀してもらうと、手術件数の少ない医師に比べて手術による死亡リスクが約半分になることがわかりました。また合併症発症率は、年間手術件数の多い医師が執刀した場合だと、手術件数の少ない医師が執刀した時と比べて約3割減少することもデータから明らかとなりました。

さらに、1施設あたりの手術件数で比較した結果からも手術件数の多さと治療成果は相関があることが明らかとなっており、膵臓切除術の手術件数が多い病院は、少ない病院と比べて手術による死亡リスクが約半分になることが示されました。ただし、合併症発症率については1施設あたりの手術件数で比較したところ差は認められませんでした。

これらの結果から、膵臓切除術の年間手術件数が多い名医や病院ほど手術に伴う死亡リスクが少ないことがわかりました。

 

膵臓がん手術の名医は年間手術件数を基準に選ぶと良い

今回紹介した論文の結果から、膵臓切除術の年間手術件数が多い医師は少ない医師に比べて手術成績が良い名医であることがわかりました。また、年間手術件数が多い病院ほど膵臓切除術の手術成績が良いことも明らかとなりました。

今回の論文で示された手術件数をそのまま参考にすることは難しいかもしれませんが、膵臓切除術の経験症例数が多い病院あるいは医師ほど手術による治療成績が良くなると言えます。

膵臓がんと診断されて手術の適応があると診断された場合には、手術の実施件数を基準として、膵臓がん手術の名医あるいは膵臓がん手術の経験が豊富な病院を探してみてはいかがでしょうか?

 

参考文献:Relative impact of surgeon and hospital volume on operative mortality and complications following pancreatic resection in Medicare patients. J Surg Res 204:326-334, 2016

 

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