子宮頸がんに対するLEEP(ループ式電気円錐切除法)では経験豊富な名医ほど取り残しが少ない

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[投稿日] '17/01/16 [最終更新日] '18/03/18 2,290views
子宮頸がんに対するLEEP(ループ式電気円錐切除法)では経験豊富な名医ほど取り残しが少ない

子宮頸がんとLEEP(ループ式電気円錐切除法)

子宮頸がんは、性行為によるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因となって発症するがんであり、近年若い女性に増加しています。HPVは初め、子宮頸部の表面の粘膜に感染し、異常な細胞を作るようになります。このことを「異形成」といいます。

異形成が軽度、中等度、高度と進行していくと、子宮頸がんに移行していきます。しかし、子宮頸がんの進行は非常にゆっくりであるため、早い段階から異常を見つけていれば治療は充分可能です。軽度・中等度異形成では経過観察となり、高度異形成以上になると、病変部を摘出する治療が適応されます。

LEEP(ループ式電気円錐切除法)は、子宮頸がんに対して世界的に広く行われている手術の1つです。先端がループ型になり、その部分に高周波の電流が流れる機器を用いて、病変部を焼き切ることで切除します。適応となるのは、高度異形成、あるいは子宮頸部に病変が留まっている初期の子宮頸がんとなります。

LEEPは通常のメスを使う手術とは異なり、熱によって処置を行うため、検体(切除した病変部)にダメージが加わります。この検体は、細胞や組織を顕微鏡で観察することで、がんの進行度を判断したり、治療方針を決定する「病理診断」において重要な素材になります。このため、ただ病変部を切除するだけでなく、出来る限り綺麗な状態で取り出すことが求められます。

今回ご紹介する論文は、医師の経験の差、つまり経験の浅い医師と経験豊富な名医との間で、LEEPの結果に影響が出るかどうかを調査した研究です。

 

経験の浅い医師と名医との間でLEEPの結果に影響は出るのか

対照となったのは妊娠適齢期の女性で、かつ検査で子宮頚管の異常が指摘された266人の患者さんです。患者さんは、医師の熟練度によって経験の浅い医師から名医まで3つのグループに分けられました。

A群:75人、経験の浅い医師によって治療が行われた患者群

B群:74人、ある程度経験のある医師によって治療が行われた患者群

C群:117人、経験豊富な名医によって治療が行われた患者群

患者を上記のグループに分けたうえで、LEEPの治療効果に影響を与えているものを調べるため、年齢、出産・中絶回数、子宮頸部の病変の程度、術者の経験、マージン(病変の切除範囲。がんは明らかにがんと分かる病変部の周囲にも散在しているため、目で見て分かる範囲よりもやや広めに切除を行う)、アーチファクト(人為的なノイズ:熱による検体のダメージや検体の断片化)などの項目を分析しました。

 

経験豊富な名医ほど子宮頸がんの取り残しが少なく、病理診断しやすい検体を確保できる

検体の妥当性には、グループによって差がみられました。病変部の様子から診断を確定させるためには病理診断が行われますが、検体のダメージが大きく、十分な病理診断が行えなかったものは全体のうち28個ありました。そのうち53.6%と半数以上がA群に含まれました。一方、名医から構成されるC群では適切な検体(状態が良い)は94.9%と最も高く、不適切な検体は5.1%と最も低いことが示されました。

病変部の切除範囲の妥当性においても、グループによって差がみられました。検体の端に病変部がない、つまり切除した部分の中に病変部がすべて含まれていたと見られる検体は184個あり、そのうち45.1%がC群、30.4%はB群、25.5%はA群のものでした。検体の端に病変部がある、つまり取り残してしまった割合は、A群で最も高いことが分かりました。

 

名医であるほど子宮頸がんに対するLEEPの精度が高い

熱による検体のダメージや検体の断片化によって適切な病理診断が行えないと、がんが取り切れたかどうか分からず、患者さんには精神的な負担がかかるだけでなく、追加の検査・治療が必要になったり、経済的な負担もかかったりすることになります。また、切除範囲が適切でないと、子宮頸がんの発症や妊娠時の合併症など、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。

今回の研究から、経験豊富な名医であるほど検体の状態も良く、切除範囲も妥当であり、治療の精度が高いことが分かりました。

LEEPは頻度の高い手術ではないため、経験を重ねている医師を探すのはなかなか難しいものですが、出来る限り経験豊富な名医にお願いできると安心ですね。

 

【参考文献】R.Sparić, A. Tinelli, M. GuidoWang, et al : The Role of Surgeonsʼ Colposcopic Experience in Obtaining Adequate Samples by Large Loop Excision of the Transformation Zone in Women of Reproductive Age. 2016 Sep 5.

 

 


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