難しい消化器手術は症例数の多い病院・名医で受けるべき!

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[投稿日] '16/01/17 [最終更新日] '18/03/18 2,871views
難しい消化器手術は症例数の多い病院・名医で受けるべき!

胃がん、大腸がんなどの消化器がんや胆石などは、日本人にとって比較的多い病気です。

なるべく手術は受けたくないと思いますが、どうしても外科的に摘出しなければいけないこともあります。そのような時にどのような基準で病院を選べば良いかアメリカからの報告をまとめました。

 

消化器手術の種類と適応

消化器手術と聞くとどういうものが浮かぶでしょうか。まず消化器にどのような臓器が含まれるかを知ると理解しやすいかもしれません。

消化器というと医学的には、消化に関わる臓器のことを指します。具体的には、食道、胃、十二指腸から大腸、肛門までを含みます。またその途中にある胆のう、肝臓、膵臓なども消化器に含みます。

消化器手術は胃がんや大腸がんなどの悪性疾患だけでなく、急性虫垂炎や交通事故による腹部外傷、胆石症や痔核などの良性疾患にも適応になります。

消化器手術には、体に負担の比較的少ない低侵襲手術、体に負担が大きく難しい高侵襲手術があり、その手術方法によって腹腔鏡手術、開腹手術に分けられます。腹腔鏡手術はお腹の中にカメラを入れて観察しながら行う手術なので高い技術を必要としますが、傷も小さく、患者さんへの負担が小さいこと(低侵襲)で知られています。

「手術に簡単なものはない!」と外科の先生に怒られてしまうかもしれませんが、胆のう摘出などの比較的一般的な低侵襲手術では命を落とすことは少ないかもしれません。一方で、肝臓の切除など血流の多い臓器を切開したり、周囲の臓器も一緒に切除するような難しい手術では手術の合併症で死亡する確率も高く、入院日数も長くなることがあります。

そのような体に負担の大きい難しい手術こそ、外科の名医にしてもらった方が良いと言えます。「難しい消化器手術に関するアメリカの報告」を紹介します。

 

消化器手術の名医は症例数の多い病院にいる?

経験症例数の差

今回紹介する論文では、アメリカのメリーランド州にある病院の約9年間に渡る入院データを解析し、難しい消化器手術における術後の死亡率、入院日数、治療費用を年間経験症例数で分けて病院ごとに比較しています。対象となった患者さんは4,561人で平均年齢は61.6歳、55%が男性でした。

難しい消化器手術に選ばれた手術

「難しい消化器手術」には、入院中の死亡率が5%以上と高かった

  • 食道切除術
  • 胃全摘出術
  • 結腸全摘除術
  • 肝葉切除術
  • 胆管吻合術
  • 膵頭十二指腸切除術

が選ばれました。

難しい消化器手術に選ばれなかった手術

「難しい消化器手術に選ばれなかった手術」は、

  • 脾臓摘出術
  • 幽門側胃切除術(胃の下部を中心に切除する手術)
  • 人工肛門形成術

などでした。

 

研究では消化器手術を症例数によって分類

この研究では、各病院の消化器手術の死亡率を比較するために、病院ごとの年間の消化器手術の経験症例数を分類しました。具体的には、

  • 10症例以下
  • 11-20症例
  • 21-50症例
  • 51−200症例
  • 201症例以上

に分けられました。

なお、分類上は記載しましたが、実際に51-200症例に含まれる病院はなかったそうです。

これからわかるのは、消化器手術の症例数は大きく2極化していて、症例数のかなり多い病院と、症例数の少ない病院に分かれていた、ということです。

直感的には、症例数の多い病院のほうが、医師の経験も豊富そうですし、消化器手術の名医も多いようなイメージがありますが、実際はどうだったのでしょうか。

 

消化器手術の症例数が少ない病院の術後死亡率は3倍、入院日数も2日長い

結果としては、前述の直感的なイメージ通り、症例数が多い病院のほうが、死亡率が低いという結果になりました。

年間経験症例数が201症例以上である病院の方が、経験症例数が少ない病院に比べて術後の死亡率も低く、入院日数も短く、治療費も安かったそうです。

なんと、20症例以下の病院では、201症例以上の病院よりも死亡率が3倍高いという結果でした。また、入院日数に関しても、201症例以上の病院では平均14.0日である一方で、10症例以下の病院では平均16.1日と2日も長いという結果でした。

つまり1年間に手術をしている症例数が多ければ多い病院ほど、患者さんにとっては安心できる病院と言えます。

 

研究のまとめ

この結果から考えられるのは、年間経験症例数の多い病院には経験症例数の多い名医がいる、経験症例数が多いため医療スタッフも対応に慣れている、手術室の設備が良い、集中治療室が充実している、術後の治療内容が良いという可能性です。

今回の報告でも言われていましたが、比較的難しくない手術に対する死亡率は経験症例数の多い名医でも名医でなくてもそれほど変わりません。しかし、難しい手術の場合には手術中や手術後に様々なトラブルが起きる可能性があります。経験症例数の多い病院、言い換えると経験症例数の多い名医がいる病院では、このようなトラブルにも比較的柔軟に対応できるのではないかと期待できます。

外科の病院を選ぶ時には、年間経験症例数は確認しておきたいですね。

参考論文:Complex gastrointestinal surgery: impact of provider experience on clinical and economic outcomes.

 

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