褥瘡(床ずれ)は最初は皮膚の赤みだけですが、どんどん深くなるので、早めにケアしましょう!

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[投稿日] '16/10/31 [最終更新日] '18/03/18 2,028views
褥瘡(床ずれ)は最初は皮膚の赤みだけですが、どんどん深くなるので、早めにケアしましょう!

褥瘡の概要 

褥瘡(じょくそう)は、「床ずれ(とこずれ)」とも呼ばれ、病気やケガで寝たきりになった人の皮膚が赤くなったり、ただれたり、潰瘍(かいよう)を作る疾患です。褥瘡は、寝たきりや車いす生活の人、特に高齢者に多く発生し、治療せず放置した場合、悪化し生命に関わる状態になることもあります。

日本褥瘡学会では、褥瘡の深さ・大きさ・浸出液(皮膚からにじみ出てくる体液のこと)・炎症や感染・肉芽(皮膚が盛り上がること)・壊死(皮膚が腐敗してしまうこと)・ポケット(皮下の見えない部分への広がり)を基準に重症度を分類しています。また国際ET協会の分類法では、皮膚の損傷の深さに応じ褥瘡を4つのステージに分類しています。

 

国際ET協会(IAET)による褥瘡の分類

※皮膚はその表面から、表皮→真皮→皮下組織→筋層→骨の順に構成されています。

  • ステージⅠ・・・表皮が赤くなるのみ
  • ステージⅡ・・・表皮や真皮に水疱ができたりただれ、欠損する
  • ステージⅢ・・・皮下組織が欠損する
  • ステージⅣ・・・筋層(筋肉の層)や骨にまで欠損が達する

 

褥瘡の症状と合併症

褥瘡の初期症状には、皮膚の損傷による痒み・痛みが伴いますが、加齢や病気が原因で感覚の麻痺が生じ痛みを感じないために、発見が遅れてしまうケースがあります。褥瘡が悪化すると、皮下組織に細菌感染が広がる蜂窩織炎(ほうかしきえん)・骨の内側が細菌感染を起こす骨髄炎(こつずいえん)・血液が細菌感染を起こす敗血症(はいけつしょう)など死に至る可能性のあるの合併症を引き起こす危険があります。

 

褥瘡の原因 

褥瘡は、長時間の圧迫により皮膚に血流障害が生じ、皮膚細胞が酸素不足や栄養不足になり損傷することで発生します。ですから、寝たきりで自分で寝返りができない方や身体を動かすことのできない方、麻痺や運動障害により車いす生活をしている方などは、身体の同じ部位に圧迫を受けやすく褥瘡ができやすくなります。

褥瘡ができやすいのはどこ?

褥瘡は、どんな姿勢を長時間とるのかにより、発生する部位が異なります。仰向けに寝ている場合に褥瘡が発生しやすいのは、後頭部・肩甲骨(背中に左右に骨が突き出ている部分)・腰やお尻・かかとです。また、横向きに寝た状態では、耳・肩・肘・腰・膝・くるぶし、車いすの場合は、お尻や背中に褥瘡が発生しやすくなります。 

栄養が悪いと褥瘡ができやすい

栄養状態が悪いと褥瘡ができやすくなります。タンパク質は皮膚の張りや水分を保つ働きがあり、亜鉛やビタミンの助けを得て皮膚の再生に不可欠なアミノ酸に分解され身体に吸収されます。特に高齢者は、タンパク質や亜鉛・ビタミンの摂取不足になりやすいため注意が必要です。血液検査で血清アルブミン値(タンパク質の一種)を測定すると、栄養状態を知る指標になります。

皮膚が弱っている時は注意

皮膚の状態も褥瘡に関係します。例えば、高齢者の皮膚は水分が少ないために弾力がなくなり、圧迫により損傷を受けやすくなります。また、皮膚が浮腫んだ状態では、内部に溜まった水分により皮膚が伸びて薄くなり圧迫や摩擦に対するダメージが大きくなります。また、抗がん剤の使用により皮膚を正常に保ち修復する機能が低下したり、ステロイド剤の長期使用により皮膚が薄くなることも褥瘡の原因のひとつです。

 

褥瘡 形成外科

 

褥瘡ができやすい疾患について

ある種の疾患も褥瘡の発生原因になります。例えば、骨盤骨折・脊椎損傷・脳血管疾患などにより長期間ベット上で寝たまま過ごさなければならない場合がそうです。また、糖尿病の人は、栄養状態が悪い・手足の神経が鈍くなる・血流が悪くなるなどの理由により、褥瘡の発見が遅れたり傷の治りが遅く褥瘡を悪化させてしまうことがあります。

 

褥瘡の治療法  

褥瘡の治療には、多角的なアプローチが必要です。例えば、褥瘡を薬物により直接的に治療することはもちろんですが、栄養状態を改善すること・運動機能の回復を促すこと・悪化させないこと・予防することなどを組み合わせて行うことで、治療の効果が高まります。ですから、大きな病院では、医師・看護師・理学療法士・栄養士・薬剤師がチームを組んだり連携して、褥瘡の治療をします。

薬で褥瘡を治す

褥瘡を治すためには、患部を直接手当することが必要です。褥瘡の手当ての方法や使用する薬剤は、傷の状態に応じて異なります。

  • 赤くなっている場合…皮膚を保護し圧迫を少なくするために、油分を含む白色ワセリンやアズレンを塗布します。
  • 水疱(水がたまった袋)ができている場合…水疱を破らないようにドレッシング材(創傷被覆材といいウレタンやポリエステルで作られている)を貼ったり、油分の多い白色ワセリンや亜鉛華軟膏(酸化亜鉛)を塗布し保護します。
  • 潰瘍がある場合…新しい肉芽(皮膚)の再生を促すためにプロスタンディン軟膏や炎症を和らげるリゾチーム塩酸塩を塗布します。
  • 浸出液(皮膚からにじみ出てくる体液)が多い場合…滲出液を吸収し、汚れた水分や膿を吸収する効果のあるヨウ素を含んだ軟膏を塗布します。
  • 感染や炎症がある場合…感染を抑える作用のあるヨウ素の軟膏や殺菌作用のあるスルファジアン銀(商品名:ゲーベン)・殺菌作用と細胞を活性化させる作用のあるポビドンヨード・シュガーなどを塗布します。

水で褥瘡を洗浄

褥瘡に薬を塗布する前に傷の表面に残った薬剤や腐った組織・浸出液などを取り除き清潔にする必要があります。この場合、イソジンなどの消毒薬を使用することは稀で、ほとんどの病院では水道水や生理食塩水などを用いて洗浄します。消毒液は新しい肉芽を再生しにくくするため、明らかな細菌感染が見られる場合にのみ使用します。

ドレッシング材(創傷被膜素材)で傷を覆う

褥瘡の表面をドレッシング材によって覆う治療法もあります。ドレッシング材は、傷にくっつかない・細菌感染を制御する・傷からにじみ出る浸出液に含まれるたんぱく質を利用し肉芽の再生を促すという利点があります。ドレッシング材には多くの種類があり浸出液の量と傷の状態に適したものを選ぶことが大切です。

圧迫・摩擦・ずれを軽減する

褥瘡の原因となっている長時間の皮膚への圧迫や摩擦を軽減することは、褥瘡の悪化を防ぐ上で重要です。一定の時間ごとに体の向きを変えたり、枕やマットを使用して体にかかる圧力を分散する方法があります。

外科的な方法

褥瘡が進行し皮膚の一部が壊死(腐敗)した場合、その部分を取り除くために外科的に壊死した部分の皮膚を切り取る手術をします。また、皮弁(ひべん)と言って、自分の体の一部から健康な皮膚を採取し、壊死して切り取った部分に移植する方法もあります。皮弁を褥瘡に移植すると、血流が良くなり治癒が速くなるというメリットがあります。

フィブラストスプレーって?

褥瘡の治療期間を早める外用剤としてフィブラストスプレーがあります。フィブラストスプレーは、bFGF(繊維芽細胞増殖因子)と呼ばれる液体です。BFGFはトラフェルミンという遺伝子組み換えにより造られたたんぱく質の一種で、表皮や肉芽・新しい血管が造られるのを促進する効果があります。薬価が高いのが難点ですが、臨床試験でも高い効果が証明されている薬です。

 

 

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