喉頭がんが歌手に多いのは歌いすぎのせいじゃない!

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[投稿日] '16/08/16 [最終更新日] '18/03/18 3,534views
喉頭がんが歌手に多いのは歌いすぎのせいじゃない!

喉頭がんの概要

喉頭(こうとう)とは人間ののどを形成する部分の一部であり、のどとは喉頭と咽頭を合わせた部分を示します。喉頭はのどぼとけ(甲状軟骨といいます)に囲まれた箱のような部分のことを示します。喉頭の働きは主に3つあり、発声・誤嚥防止・気道確保です。誤嚥とは飲食物が食道を通過せず、気道に入ってしまうことで、肺炎(誤嚥性肺炎)をしばしば引き起こします。喉頭にあるふた(喉頭蓋)が誤嚥を防止しています。

この喉頭にできたがんを喉頭がんといいます。喉頭がんが進行すると、発声・誤嚥防止・気道確保の3つの働きが失われてしまいます。最近では、ハロプロのプロデューサーとしても有名なシャ乱Qのボーカルのつんくさんが発症したのも喉頭がんです。

喉頭がんの発症は非常に少なく、がん全体の発症率の0.6%ほどであり、人口10万人あたり3~4人程度です。発症率は女性より男性のほうが10倍発症率が高く、50歳代から80歳代で発症することが多いがんです。たばこによって発症率・発症リスクが高まることが知られており、発症者の90%は喫煙者です。その他発症リスクを高める要因として、アルコールやアスベストの暴露(ばくろ)があります。

 

喉頭がんの症状

症状に関しては発生した場所によって最初に認められる症状に特徴があります。

声門がん

喉頭がんのうち、もっとも発症頻度が高いがんです。ほぼすべての方に、低いがらがら声、雑音の入った声、息がもれるような声(嗄声:させい)が認められます。がんが進行すると嗄声がひどくなり、呼吸困難の症状が認められます。

声門上がん

のどの異物感、いがらっぽい、食べ物を飲み込んだ際の痛みといった症状が認められます。進行すると耳に痛みが広がることもあり、嗄声や呼吸困難といった症状が認められます。

声門下がん

かなり進行するまでは無症状です。

 

喉頭がんの原因

喉頭がんの原因は以下の通りです。

a: たばこ(喫煙)

たばこ(喫煙)は喉頭がんの最大のリスクファクターです。患者のほとんどはヘビースモーカーで、喉頭がん患者さんの喫煙率は90%以上といわれています。喫煙者と非喫煙者で比べると、男性で約30倍、女性で約5倍発症率が高まるといわれています。

b: アルコール(飲酒)

アルコールも発症リスクを高めるといわれており、アルコール摂取が多い地域では発症率が高いというデータがあります。

c: 高齢

直接的に高齢が喉頭がんの発症の原因になるというよりは、喫煙やアルコールによってのどを傷つける期間が伸びることで、発症率が高いのではないかといわれています。

 

しかし、つんくさんのように歌手など継続的に大きな声を出すことでのどを酷使する仕事の方がなりやすいというイメージがありますが、のどの酷使と喉頭がんは関係ないと言われています。ただ、歌手の方だと、喉頭がんにより歌への影響が大きいので、話題になりやすいためそういうイメージがついてしまったのでしょうか。

またスナックやカラオケに通うのが好きな方など、タバコを吸い、お酒を飲みながら歌を歌うことが多いので、発症リスクが他の人よりも高いと思われますので、注意が必要です。

喉頭がん/咽頭がん 耳鼻咽喉科

喉頭がんの治療法

喉頭がんの治療は進行具合によって決定されます。しかし、声を出せなくなるということが生活の質(QOL)に大きく影響をあたえるため、最近では発声機能を温存することが重要視される傾向にあり、早期の小さい声門がんと声門上がんの場合は、まず放射線治療が行われます。がんが進行していた場合は、外科療法(手術)が施行されることが多いですが、放射線治療単独または、放射線療法と抗がん剤(化学療法)が併用されることがあります。

1.放射線療法

早期の声門がん、声門上がんには放射線療法が良く行われます。早期の喉頭がんでは放射線が良く効くため、放射線単独で治療できる場合が多く、80~95%が治療に成功し、喉頭を切除することなく温存することができます。ただし、治療後にがんが残っていたり、再発した場合には手術を行います。

進行したがんに対しては、放射線の治療効果が低いことが多いため、初期治療の段階から手術が行われることがあります。ただし、喉頭の温存を強く希望する場合は、放射線療法、もしくは、化学療法と放射線療法を併用して治療を行うことがあります。それらで効果がない場合は手術を行うことになります。

放射線療法には副作用がほぼ必ず発生します。喉頭への放射線を照射した場合、疲労感・だるさ、食欲不振、皮膚の赤み・かゆみなどが発生します。

2.外科療法(手術)

a: 喉頭部分切除術

早期がんの場合は、喉頭部分切除術が適応されます。がんが小さく、早期がんの場合にはレーザー手術が行われることがあります。この手術の大きな利手は発声機能を保つことができることですが、部分切除術は限られた病院でしか行われていません。また、気道に飲食物が入って誤嚥を起こすこともあります。

b: 喉頭全摘出術

がんが広い範囲に広がっている場合は、喉頭すべてを取り除く喉頭全摘出術が適応されます。喉頭を減摘出すると発生機能が失われてしまいますので、最近では発声機能を残すために「喉頭亜全摘出術」が行われる場合があります。喉頭亜全摘出術とはがんと声帯(発声するための重要な器官)の4分の3を切除し、喉頭の上下の骨を残す手術です。発声機能は温存されますが、がんを完全に除去できない可能性もあり、リスクが残る手術です。

喉頭部分切除術や喉頭亜全摘出術後は気道に飲食物が入って誤嚥を起こすこともあります。食べ方を工夫することで改善されますが、改善されない場合は喉頭全摘出術を行うことがあります。喉頭全摘出術後は普通とほぼ同じように食事ができます。

c: 頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)

声門がんと声門上がんで、かつ頸部リンパ節に転移がある場合、耳の後ろから鎖骨までの範囲の組織(リンパ節を含んだ部分も)を切除する頸部郭清術が行われます。

3.化学療法(抗がん剤治療)

喉頭がんに対する化学療法は、再発や喉頭から遠くに転移(遠隔転移)している場合、手術することができないような場合は、化学療法が行われます。また手術が可能であっても発生機能の温存を希望する場合には放射線療法と化学療法が併用されます。

 

 

なお、「喉頭」とともに「のど」を形成する「咽頭」にも、がんはできます。咽頭がんについては「飲酒とタバコをされる方は咽頭がんのリスクが高いです!」のコラムで紹介しています。

 

 

 

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