肝臓がんの治療は開腹手術による切除の他に、薬物による最新治療もあります

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[投稿日] '16/06/28 [最終更新日] '18/03/18 310views
肝臓がんの治療は開腹手術による切除の他に、薬物による最新治療もあります

肝臓がんの治療法

1.外科療法

a:肝切除
がん組織とその周囲を手術によって取り除く治療です。すべてのがん組織を取り除くことができれば完治を望むことができます。

手術方法は開腹手術(お腹をメスで大きく切り開いて行う手術)と腹腔鏡手術があります。腹腔鏡手術(お腹にあけた小さな穴から内視鏡を入れて行う手術)は適応が限られている(広範囲のがんは切除できない)ため、多くは開腹手術で行います。術後1~2週間で退院可能となり、1ヶ月後には社会復帰も可能になります。術後は痛みを伴いますが、痛み止めなどで痛みをコントロールします。

b:肝移植
肝臓をすべて取り出して、ドナー(臓器提供者)の正常な肝臓を移植する治療です。肝移植は肝切除が適応できないような高度に肝機能が低下した方のみ、受けることができます。

肝移植希望者は日本で300~400人ほどおられますが、提供数は月平均3件ほどであるため、ハードルの高い治療法です。移植後の拒絶反応を抑えるため免疫抑制剤の投与が必須です。免疫を抑えることによって発生する感染や、腎機能障害、高血圧、高血糖、はきけ・嘔吐などの消化器症状が副作用として発生することがあります。

2.穿刺(せんし)療法

体の外から、がん細胞に処置を行う療法の総称です(※詳細は後述)。外科療法に比べて患者さんの体の負担が少ないことがメリットです。しかし治療対象となるのが、一般的に肝臓がんの大きさが3cm以下で3個以下と決められています。(それを超えて行う場合もあります)がん細胞が残ってしまう可能性もありますが、比較的簡単な治療法で副作用も少ないことから、社会復帰がしやすい治療法です。

以下3種類の治療方法があります。

a:経皮的エタノール注入療法(PEIT)
がん細胞に無水エタノールを注入して、がん細胞を殺す方法です。

b:経皮的マイクロ波凝固(ぎょうこ)療法(PMCT)
がん細胞にマイクロ波という電磁波をあてて、がん細胞を熱で固める治療法です。

c:ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)
がん細胞に針を刺して、がん細胞を熱で焼く治療法です。現在は穿刺療法の中ではこちらのラジオ波治療が最も一般的になっています。

3.肝臓がんの血管内治療:肝動脈塞栓(そくせん)療法(TAE)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動注化学療法(TAI)

すこし似たような難しい単語が並びましたが、これは肝臓に流れている動脈にカテーテルを通じて、いろいろな物質をながす治療です。物質によって治療法の名前が異なってきます。

肝臓がんに限らず、がん細胞は非常に食欲が旺盛で、栄養を取ることでさらに成長します。肝動脈塞栓療法(TAE)はがんに栄養を運んでいる血管を人工的に遮断して、がん細胞に栄養を与えないようにし、死滅させる治療法です。この治療は血管造影(CTスキャンを使用して、血管を目でみる)検査を必ず実施する必要がありますので、造影剤が使用できない患者さんには使用できません。最近では、まず抗がん剤を肝臓がんに取り込まれやすい造影剤に混ぜて投与し、その後、塞栓物質を注入して死滅させる肝動脈化学塞栓療法(TACE)があります。これらの治療法はがんの個数に関係ありませんので、他の治療と併用することもあります。

肝動注化学療法(TAI)は肝動脈化学塞栓療法(TACE)と少し異なり、抗がん剤だけ(塞栓物質はなし)を投与します。

4.化学療法(抗がん剤治療)

がん細胞が転移(肝臓以外の場所で発生)しているような場合、つまり上述してきたような局所的な治療では効果が期待できない場合に行われます。

様々な抗がん剤がありますが、標準治療として位置づけされているのは、経口薬のソラフェニブ(商品名:ネクサバール)があります。副作用は手のひらや足の裏に湿疹や紅斑(赤い斑点)があり、これらは痛みを伴うこともあります。下痢や吐き気、高血圧、肝機能障害などの副作用も認められます。

肝臓がんの最新治療

肝臓がんの原因として肝炎があることを前回書きましたが、近年肝炎に対する新薬が続々と登場しています。ギリアド社のハーボニー、MSD社のバニヘップ、アッビー社のヴィキラックスなどC型肝炎に対する効果的な薬が出てきていますので、早晩肝炎の患者さんが激減して、肝臓がんになる患者さんも減ってくると思います。

また、すでに肝臓がんになった患者さんに対して注目を集めているのが、PD-1抗体/PD-L1抗体です。がん細胞は白血球などの免疫細胞(体内の異物を攻撃する細胞)の働きを抑える作用をもっています。PD-1抗体/PD-L1抗体はこの免疫細胞の働きを抑えるというがん細胞の働きをブロックすることで、人間が本来持っている免疫機能を元通りに戻し、がん細胞を攻撃させる薬剤です。なので肝臓がんだけではなく、幅広いがんに効果が期待されています。

日本国内では厚生労働省から承認を得ているPD-1抗体のNivolumab(商品名:オプジーボ)があります。適応は悪性黒色腫(皮膚がん)と非小細胞肺がんのみですが、肝臓がんやそのほかのがんについても、現在臨床試験(治験)を実施しているところです。PD-1抗体/PD-L1抗体はNivolumab(商品名:オプジーボ)以外にも複数あり、現在様々ながんに対して臨床試験(治験)が行われています。

この薬剤のすばらしい点は、従来の化学療法よりも効果が高いことです。例えば、生存期間が延長された、がんの進行が食い止められている、がんが小さくなった、がんが完全に消えたなどということが、臨床試験データから示されています。

副作用としては疲労感、倦怠感、はきけ、嘔吐、下痢・便秘などの消化器症状などがありますが、従来の抗がん剤と比べると、格段に副作用が少ないのが特徴です。

デメリットとしては、お薬の値段が非常に高額ということです。日本には高額医療制度がありますが、それでもオプジーボで計算すると薬代だけで年間100万円以上の負担は必要になります。

 

 

 

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