思春期疾患の一つである強迫性障害の治療には時間がかかります

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[投稿日] '16/07/12 [最終更新日] '18/03/18 1,447views
思春期疾患の一つである強迫性障害の治療には時間がかかります

思春期疾患とは

こころも体も成長する思春期にはさまざまな悩みが生じ、親に対してもこれまでにはなかったような態度をとるようになります。また、腹痛などを理由に学校に行きたがらない、反抗的な態度で問題行動が目立つなど、成長期のプロセスなのか、こころの病気によるものなのかという点は判断が難しいものです。

そのため、病院で診てもらう必要があるかどうかにも迷うことでしょう。受診の一つの目安は本人の不安や苦痛が強い、こだわりが強くやるべきことができない、お風呂に入りたがない、逆に長時間シャワーを浴びている、食事や睡眠など生活の乱れがある場合です。また、興奮状態になったり、暴力を振るったり、あるいは学校に行かず、人にも会いたがらず引きこもっているなど社会生活の支障が大きいときも受診を考える必要があります。

受診先は発達障害や思春期の精神障害を診てくれる小児科のほか、児童・思春期精神科などの専門外来がある病院がよいでしょう。なお、児童・思春期精神科の場合、幼児期の3歳頃から18歳未満のお子さんを対象とすることが多いです。

思春期に発症しやすい精神障害としては統合失調症やうつ病、不安障害、摂食障害などがあります。ここでは、不安障害の一つである強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder:OCD)について詳しく見ていきましょう。

 

強迫性障害とは

強迫性障害になると、自分でも無意味でバカバカしいと思うような考えが頭から離れず(強迫観念)、その不安を打ち消そうとして無意味な行為を過剰に続けてしまいます(強迫行為)。

強迫性障害の発症は20歳前後に一つのピークがありますが、10歳前後の時期にも多いことが特徴です。患者数としては、100万人強と推定されています。

 

子どもの強迫性障害

子どもに限ると、強迫性障害は女子よりも男子に多い傾向があります。子どもの強迫性障害には、チック症と呼ばれる顔をしかめたり、クンクンと鼻を鳴らしたりする症状を伴うことが特徴の一つです。子どもの場合は、大人と違い自分が気にしていることや行っていることが「無意味」かどうかの判断は難しく、およそ10歳頃から「無意味」という自覚がでてくるといわれています。

また、強迫性障害のお子さんのうち、3割前後の子に発達障害の併発がみられ、さらに、うつ病など他の精神障害を合併している子もいます。一方で、発達障害でみられる「こだわり」などが影響して二次的に強迫性障害を発症することも少なくありません。

 

子どもの強迫性障害の症状

強迫性障害になると、トイレに行ったり、多くの人が出入りするドアノブを触ったりすると自分の手や体が「汚れた」と心配になり、長い時間、手洗いやシャワーを続けてしまいます。また、同じことを何度も確認してしまう、数にこだわり、自分で決めた回数を繰り返さないと止めることができない、ある特定の物が目に入ると数えずにいられないといったこともあります。

ペンケースや消しゴムを机に置くにも自分で決めた場所から少しでもズレると直さずにいられない、机や椅子が教室の床の線に合っているかが常に気になって直してばかりいるといったことも多いです。

気にしてばかりいる自分に対して、子どもは大きくなると次第に恥ずかしさや変に思われるのでは?といったことを気にするようになります。そのため、辛くても誰にも言わず、むしろ隠そうとするので親も周囲も気づかずに過ごしていることも少なくありません。しかし、同じことを何度も繰り返す、親が止めるようにいっても少なくならないといった場合には比較的、周囲が病気に気づきやすいようです。

こだわりや気になることが多いと本人の辛さだけでなく、強迫行為のために時間がかかり、学校や約束の時間に遅れてしまうといったことも起こります。また、学校ではこだわりが強いため他の子と同じペースで作業ができない、強迫行為を友達に止められてトラブルになったり、周囲に不思議に思われたりということもあります。強迫性障害の日常生活や学校生活への影響は決して少なくないのです。

 

子どもの強迫性障害の治療

薬物療法

強迫性障害の治療には「SSRI」と呼ばれる抗うつ薬が使用されます。SSRIは脳の情報伝達にかかわる神経伝達物質の一つ「セロトニン」の働きを高める作用があり、うつ病だけでなく強迫性障害などの不安障害にも効果を示す薬です。

大人の強迫性障害では「パキシル」(塩酸パロキセチン)や「ルボックス」(フルボキサミンマレイン酸塩)など数種類のSSRIを使用できますが、小児で使えるのは現在のところパキシルに限られています。パキシルは従来の抗うつ薬より副作用が少なく、うつ病のほかに不安障害の一つであるパニック障害などにもよく使われる薬です。

パキシル以外のルボックスなどのSSRIは、海外ではすでに子どもの治療に使用され、日本では実際の患者さんが服用して治療効果を調べる治験において効果が確認されています。将来的には、日本でもパキシル以外のSSRIが小児の治療に適応できることが期待されています。

効果が出るには時間が必要

SSRIは毎日、処方された通りに飲むことが重要ですが、薬の効果はすぐに現れるものではありません。特に、強迫性障害は時間がかかり、場合によっては2か月ほどたってやっと効き始めることもあります。

また、SSRIを飲み始めると下痢や眠気などの副作用が先に現れるため不安になることも多いのですが、薬を勝手に中断せずに心配なことがあったら医師に相談しましょう。

心理療法

心理療法のうち強迫性障害に効果があるとされているのは、認知療法と行動療法を組み合わせた認知行動療法です。その中でも、効果が高いとされる暴露(ばくろ)反応妨害法についてご紹介しましょう。

強迫性障害では、不安が起こると打ち消すために特定の行為をし、その行為により一時的に不安が軽くなるため、不安が生じるたびに強迫行為を繰り返すといった悪循環が起きています。暴露反応妨害法では、この悪循環を断ち切り、新しい方法を学習する、身につけるための心理療法です。

暴露法では不安を強くする状況を回避せずに、その状況を経験する、つまり不安に身を曝す(さらす)ことを通して「不安に慣れる」ことで不安の軽減を図ります。また、反応妨害法は、不安が起こっても打ち消す行為をせずに我慢することを通して、強迫行為をしなくても不安が軽減することを体験し強迫行為を減らしていく心理療法です。

「思い通りにならないこと」への適応を学ぶ必要性

子どもが強迫性障害になると、大人の場合に比べて家族が巻き込まれやすいことが特徴です。たとえば、手洗いを繰り返すお子さんでは、家族にも過剰に手を洗うように求めたり、自分が正確にできたかどうかを家族に何度も確認したりといったことが起こります。「自分はやれないからお母さんがやって」と親を巻き込んで回避することも起こりがちです。

巻き込まれた家族の方も疲れてしまい、「何度も同じことを言って!」と親がきつく叱ったり、強迫行為を厳しく制限したりするとパニックを起こす子もいます。強い口調で制限するのは悪影響の方が多くなるので避けるようにしましょう。

しかし、お子さんが思い通りにならないことを学ぶ機会も必要です。「不安だから」と家族まで巻き込む状態が続くと、家族をコントロールすることで満足感を得るようになってしまうこともあります。

不安があっても自分でやってみる、確認などの強迫行為をせずに我慢して、行う必要のあることをやってみることが大切です。周囲の人はお子さんができるように落ち着いた声で促しましょう。もし、お子さんの要求通りに家族が動いてしまうと、友達など家族以外の人は思い通りに動いてくれないのでかかわることが難しくなってしまいます。

もし、お子さんが強迫行為を少しでも我慢できたときには、そのことをしっかり受け止めて褒めましょう。望ましい行為を続けられるようにするには、できたときにすぐに褒める、具体的に褒めることが大切です。そして、不安になっても確認しない、また、心配したような最悪のことは行らなかったという経験を増やす中で強迫行為や不安の軽減を目指しましょう。

 

 

 

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