薬物中毒/アルコール中毒は身体的な問題だけでなく、社会的問題にもつながります

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[投稿日] '16/04/12 [最終更新日] '18/03/18 237views
薬物中毒/アルコール中毒は身体的な問題だけでなく、社会的問題にもつながります

薬物中毒/アルコール中毒の概要

覚醒剤やアルコールなどの摂取によって起こる精神障害は身体的な問題を引き起こすことも多く、また、家族関係や仕事への影響など社会的な問題も抱えやすいことが特徴です。
ここでは、まず、覚醒剤やアルコールなどに関する調査から見ていきましょう。

薬物に関する調査から見えてくるもの

厚生労働省研究班の調査によるとアルコール依存症の人は2003年に推計80万人だったものが2013年には109万人に増加し、予備軍を含めた人口推計は294万人になりました。ここでいうアルコール依存症とは世界保健機関WHOの「国際疾病分類ICD-10」の診断基準を満たすもので、予備軍とは「アルコール関連障害特定テストAUDIT」で15点以上の人です。

性別としては109万人のうち男性は95万人、女性は14万人で9割弱が男性ですが、女性は10年前の8万人に比べると2倍弱の伸びを示しています。

また、国立精神・神経医療研究センターは全国の病院に入院、あるいは通院している薬物関連障害患者に関する調査を1987年から隔年で行っています。主たる使用薬物について2012年のデータを見てみると、もっとも多かったのは覚醒剤の42.0%でした。次に多かったのは2012年から調査に加えられた脱法ドラッグで16.3%、睡眠薬や抗不安薬は15.1%で有機溶剤の7.7%を上回っています。

睡眠薬や抗不安薬などの向精神薬を主に使っていた患者は女性が多く、反社会的な問題が少ないことなども特徴です。しかし、向精神薬の依存については数十年前から問題視されながらも大きな改善が見られません。このことは患者だけの問題ではなく、向精神薬を処方する医師の側もより慎重な処方とするなど予防の重要性が指摘されています。

アルコール中毒を含め薬物中毒を理解するには、次に「乱用」や「依存」という用語について押さえておきましょう。

薬物乱用

薬物乱用は“乱用”のイメージから継続した使用を連想しがちですが、社会的な規範に反して薬物を使った場合はたった1度でも「乱用」です。つまり、薬物乱用は回数の多さではなく、その人が属する社会で容認されている目的で使用したかという点が問われます。

そのため、接着剤などの有機溶剤を接着剤として、また、睡眠薬や抗不安薬を治療薬として目的に合った使い方で、適切な量を使用したならば乱用ではありません。しかし、接着剤を吸引する、睡眠薬を一度に大量に服用した場合は乱用になります。

薬物依存

薬物乱用を繰り返すことによって陥りやすい状態が「薬物依存」です。薬物依存になると、薬物を摂取したいという強い欲望や強迫感を自己統制することができず、薬物乱用を繰り返します。

また、摂取した薬物の効果が弱くなり、以前のような快感を得るには多くの量が必要になる「耐性」が現れることも多いです。さらに、薬物摂取の中止や減量したときに不眠や手の震えなどの離脱症状が現れる場合は、「身体依存」が成立していると考えられます。
依存状態になると、何よりも優先して薬物を求める「薬物検索行動」が多くなることも特徴の一つです。

薬物による依存の違い

依存は「身体依存」のほかに、薬物を摂取したいという欲望(渇望)を抑制できなくなる「精神依存」があり、薬物によって依存の現れ方には違いがあります。アルコールやバルビツール系の睡眠薬は身体依存と精神依存のいずれも強い依存が生じますが、アンフェタミン類(覚醒剤)やコカインは精神依存だけが強く現れることが特徴です。

 

薬物中毒

薬物中毒は、一過性に生じる「急性中毒」と薬物を長期に連用した結果生じる「慢性中毒」に分けることができます。
急性中毒はアルコールや精神に作用する物質の摂取によって意識レベルや知覚などに一過性の異常が起こり、身体症状や精神症状が現れる状態です。急性中毒の場合は意識障害が出現し、ときに生命の危険を伴うこともあります。

ここでは、覚醒剤について、どのような症状が現れるのかを見ていきましょう。

急性中毒

覚醒剤を摂取すると、脳が刺激されて「多幸感」といったその場に不似合いなほど気分が高揚し、快感が得られます。しかし、これは一時的なもので数時間後には強い倦怠感や不安感などが現れるのが覚醒剤の特徴です。また、覚醒剤の大量摂取によって幻覚や意識障害が起こることもあります。

慢性中毒

長期間の覚醒剤使用によって引き起こされる慢性中毒は「覚醒剤精神病」ともいい、主な症状は幻覚や妄想です。覚醒剤を中止して幻覚や妄想の治療を行うと症状の多くは改善しますが、なかなか消えないこともあります。

また、覚醒剤精神病がよくなっても依存は残ることが多く、患者本人だけで薬物への渇望をコントロールするのは容易ではありません。専門家による適切な治療を受け、覚醒剤の使用を日々“中止し続ける”ことが重要です。

次の「アルコール中毒は女性のほうが発症しやすく、遺伝的要因も関係します」では、薬物中毒とアルコール依存症について詳しくご紹介しています。

 

 

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