血糖値が高い糖尿病予備群の人は、食生活の改善から

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[投稿日] '16/10/01 [最終更新日] '18/03/03 392views
血糖値が高い糖尿病予備群の人は、食生活の改善から

「血糖値が高い」という血液検査の結果がでてしまったあなた。「血糖値が高い」状態では、体の中はどのようなことが起こり、どのように改善すればいいのかなど具体的に知る必要があります。

「ちょっと最近食べ過ぎ・飲みすぎだったかな。。明日から少し気をつければ平気だろう。」と自分でかってな判断をしてはいけません。せっかく検査で異常が見つかったのですから原因をつきとめて、改善するために真剣に向き合っていきましょう。

 

血糖値が高いかどうかの指標となる検査項目

血糖値が高いかどうか指標にする検査項目には実は「血糖値」以外にも「HbA1c」があるということをご存知でしょうか。今回は双方の違いについて少しでもご理解頂ければと思います。

血糖値が高いかどうかの指標① 血糖値

血糖値は測定する条件によって3種類の方法があり、基準値(正常値かどうかの基準)もそれぞれ違います。

  • 朝食前血糖値:110 mg/dL未満が正常域、126 mg/dLは血糖値が高いと判断します。
  • 随時血糖値:200 mg/dL以上であれば血糖値が高いと判断
  • 75g糖負荷試験2時間値:140 mg/dL未満が正常域、200 mg/dL以上であれば血糖値が高いと判断

なお血糖値の単位はmg/dLで表示します。これは、1dL(100cc)の血液の中に糖分の1種であるグルコースが何mg含まれるかという数値になります。医師が通常「血糖値は110」などと言ったりしますが、血糖値の単位であるmg/dLが省略されているということになります。

皆さんが健康診断で血糖値を測る場合は、朝食前血糖値が多いと思います。これは空腹時の血糖値を調べています。

随時血糖値は「いつでも」という意味で、特に検査の前の食事等を制限すること無く測定した値ということになります。直前に食べた物によって影響を受けるので正直あまり正確な値とはいえませんが、簡易に測れるという意味で非常に血糖値の高いかたをふるいにかけるということはできます。

75g糖負荷試験2時間値は非常に複雑な名前ですが、詳しい定義としては「10時間以上の絶食のあとに朝食前に75gのグルコースを加えた溶液を飲んで2時間後の値を測定したもの」になります。空腹時に糖を摂取すると身体でどのような反応が起こるかということを調べています。他の値が正常域であっても75g糖負荷試験2時間値で異常値が見つかることもあるため、糖尿病の診断基準の1つに含まれています。

血糖値が高いかどうかの指標② HbA1c

HbA1cとは、糖化ヘモグロビン値(glycohemoglobin)のことで、糖と結合したヘモグロビン(血液の成分)の量を測ります。これは過去1~2ヶ月の糖の血液濃度を反映します。

HbA1cの正常値:6.5%未満

HbA1cは一時点の血糖値ではなく、過去の平均の血糖変化をみることができるので正確な値といえます。

糖尿病の診断はこれらを組み合わせて行います。詳しくは日本糖尿病学会が発表している糖尿病診断の指針をご覧ください。

参考:日本糖尿病学会「糖尿病診断の指針」

血糖値 高い 糖尿病

血糖値が高い場合、疑われるのは糖尿病だけとは限らない

一般的なイメージとして、血糖値が高いというと、とにかく「糖尿病」というイメージを持たれることが多いと思いますが、厳密には「血糖値が高い=糖尿病」ではありません。

血糖値の測定は、体内のブドウ糖がエネルギー源としてきちんと利用されているかどうかを確認しています。血糖値が高い場合の疾患として、実は糖尿病以外にも肝機能の異常、すい臓機能の異常、ホルモンの異常、甲状腺の異常などが考えられます。癌の可能性もあります。また妊娠中も一時的に血糖値が高くなることがあります。つまり血糖値が高い場合には糖尿病さえ気をつければよい、というわけではないのです。血糖値に限った話ではないですが、健康診断で検査値に異常が見られた場合には、きちんとその原因を突き止める必要があります。特に「要再検査」や「要精密検査」になったときには必ず検査を受けましょう。

また、誰でも食後には血糖値が高くなりますので、「健康診断前の何時間は食事を取らないでください」という案内をきちんと守るようにしましょう。

 

糖尿病の合併症

糖尿病そのものよりも、さらに怖いのは糖尿病の合併症です。糖尿病には、

  • 「糖尿病性網膜症」
  • 「糖尿病性腎症」
  • 「糖尿病性神経障害」

とよばれる三大合併症があります。これが、糖尿病は放置せずに早い段階で治療しなければならない大きな理由の一つです。

糖尿病性網膜症

糖尿病によって引き起こされる目の病気です。体内の余分な糖が目の内側にある薄い膜(網膜)を傷つけてしまいます。患者の自覚症状は少ないため気づいたときには進行してしまっていることが多いです。最悪の場合失明します。

糖尿病性腎症

糖尿病によって引き起こされる腎臓の病気です。血糖値が高いと、必要なもの、排出すべきものを分ける「ろ過」の役割をしている腎臓に負担がかかってしまいます。その結果、腎臓の機能が低下し、「人工透析」を受けなければならなくなってしまいます。

人工透析とは人工的に腎臓の役割を果たすポンプに血液を流して血液を浄化してもらう装置のことです。糖尿病性腎症が悪化すれば腎臓移植と並んで人工透析をしなければ生きていけない状態になってしまいます。人工透析は非常に生活の質を落としてしまいます。週3回、1回4時間程度も時間を奪われてしまうからです。働きながら人工透析に通うことが非常に大変であることは、皆さんも想像できるでしょう。

糖尿病性神経障害

3大合併症の中でも糖尿病性神経障害は、初期に自覚症状がみられます。それは手足のしびれです。特に足裏のしびれから始まり、手にも症状がみられることが多いようです。しびれは血中の糖が神経の血管を傷つけることで生じます。初期は自覚症状があると説明しましたが糖尿病性神経障害が悪化すると神経が麻痺して一部の感覚がなくなってしまいます。ケガや傷に気づかずに、そこから菌が増殖して足が腐ってしまった、というようなことも珍しくありません。糖尿病は免疫力が低下するため傷が治りにくい状態になってしまいます。既にしびれなどの症状がある場合は要注意です。

糖尿病の典型的症状としては多飲・多尿・口渇が挙げられます。のどが渇き、水分を多く摂取するため、おしっこの回数が増える、といった悪循環がおきます。また非常に疲れやすく、免疫力も低下するため風邪をひきやすくなります。「血糖値が高い」という結果がでた上、既にこのような症状が見られる場合は糖尿病の可能性が高いです。

 

血糖値が高いときに、どの診療科で診てもらうべきか

血糖値 高い 糖尿病

先ほども触れましたが、血糖値が高いことがわかったら、その原因をつきとめなければなりません。

まずは糖尿病と決めつけずに、それ以外の病気の可能性も疑ってください。先ほども述べたように糖尿病以外にも、妊娠や甲状腺の異常でも血糖値は高くなります。例えば健康診断で血糖値以外にも肝機能の状態を示す、ALT(GPT), AST(GOT) の値にも異常が見られている場合は肝臓に何か疾患があるかもしれません。

そこで、いきなり糖尿病内科にかかるよりも、まずは内科で診てもらうことをお勧めします。その結果、糖尿病と診断された場合、内分泌代謝内科や糖尿病外来などの専門の病院あるいはクリニックにかかるとよいでしょう。

 

血糖値が高く糖尿病になったとき、どのように治療していけばよいか

上記のように様々な原因の中から、糖尿病であった場合には、まずは生活習慣を見直すこと、それでも改善がみられないようであれば糖尿病治療薬を服用すること、が必要になります。

食生活の見直し

まず見直さなければならないのは食事です。

血糖値が高い方は糖分を摂りすぎていることが考えられます。甘いものが好き、お酒が好き、ご飯・麺・パスタなどの炭水化物が好き、という方が多いのではないでしょうか。まずは糖分を減らした食生活に変えましょう。

特に夜ご飯で摂取した糖分は消費されることなく体に貯められてしまうので夕食の炭水化物は極力減らしましょう。「炭水化物をやめると何を食べていいかわからない」という方は、こんにゃくやおからでできた糖質ゼロの麺やご飯が売っているので是非試してみてください。最近の糖質ゼロ麺やパスタ、ご飯などは美味しさの面でも工夫されていますので、無理だと思わずにまず食べてみてください。

アルコールも糖質ゼロのものにして、お菓子も糖質をカットしているものを選ぶようにしましょう。夕食の時間帯も可能な限り早い時間に済ませましょう。

また、フルーツはビタミンも豊富で体によさそうなイメージがありますが、フルーツはほぼ水分と糖分でできているため、血糖値が高い方にはあまりおすすめできません。ご飯お茶碗1杯120gに含まれる炭水化物は44g程度ですが、りんごやバナナ1個に含まれる炭水化物も36g程度と、かなり近しい量の炭水化物を含んでいることがわかります。

摂取した糖分をエネルギーとして消費することも大切で、それには運動が一番です。激しい運動をする必要はありませんがウォーキングがおすすめです。バスで移動していたところを歩く、一駅手前で降りるなど簡単なことから始めてみてください。

糖尿病治療薬

糖尿病は世界的に患者数の多い病気ですので、非常に多くの薬の種類が存在します。また毎年のように新薬も登場しており、血糖値を下げる働き方も効果もそれぞれです。

ただどの薬にも共通している副作用が“低血糖”です。低血糖時はすぐに糖分を補給するなどの適切な対処をしなければ命に関わることもありますので薬を服用するときは十分に気をつけましょう。

 

「血糖値が高い」まとめ

「血糖値が高いから糖尿病」と決めつけずにまず、原因をつきとめてください。そして糖尿病であることがわかったら合併症を防ぐために、とにかく血糖値を下げる必要があります。薬物治療と生活習慣の改善を始めてください。また糖尿病患者は、心筋梗塞や脳卒中あるいは最近では認知症のリスクを高めるともいわれています。

つまり「血糖値が高い」状態は非常に多くの病気のリスクを抱えることになるので、1日でも早く治療を始める必要があります。皆さんも正しい知識を身につけて、前向きに自分の体と付き合っていきましょう。

 

 

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