糖尿病網膜症になりやすい糖尿病の人は….

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[投稿日] '17/01/04 [最終更新日] '18/03/18 349views
糖尿病網膜症になりやすい糖尿病の人は….

糖尿病の3大合併症である糖尿病網膜症

わたしたちの身体では、インスリンという物質を使って食事から得た糖分を、身体に蓄える形に変換しています。糖尿病になってしまうと、この作用が行われないために、血液中に糖分がただよい続けている状態になっています。この状態が高血糖であり、症状としてのどが渇きやすくなったり、尿量が減ったり、疲れを感じやすくなります。

また、高血糖が続くと血管が傷ついてしまうことが知られており、網膜の血管が障害されて視力低下から失明をもたらす「糖尿病網膜症」、腎臓の血管が障害されて高血圧やタンパク尿、むくみを引き起こす「糖尿病腎症」、神経が障害されてしびれや痛み、もしくは感覚の消失を招く「糖尿病神経障害」が3大合併症として知られています。

今回は、糖尿病を抱えている患者さんが糖尿病網膜症を合併するリスクとなる要因やその発生率について調査した研究をご紹介します。

 

1型糖尿病と2型糖尿病の違い

糖尿病には大きく分けて2つの型があります。

1型糖尿病は、免疫の異常により自分自身の細胞を異物として破壊してしまう病気で、インスリンを作る細胞が壊れてしまうために糖尿病となってしまいます。糖尿病のうち1型糖尿病は数%と少なく、患者さんの多くは子どもあるいは若者です。エネルギーを身体に蓄えることができないため、患者さんは痩せている傾向があります。

一方、2型糖尿病は食べ過ぎや運動不足、肥満などによって、インスリンの分泌が追い付かない、あるいはインスリンが効きづらくなってしまうために起こる糖尿病です。糖尿病の90%以上はこちらの型であり、どの年代にも発症します。

1型糖尿病と2型糖尿病の違いについては、こちらのコラム「糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります!」でも説明しています。

 

糖尿病網膜症のリスク因子は何?

2型糖尿病は主に中年以降に多い病気でしたが、近年では子どもや若者の間でも2型糖尿病が増加しています。

この研究では、1型糖尿病と2型糖尿病の患者での糖尿病網膜症の割合を比較し、糖尿病網膜症を発症するリスク要因を解明しつつ、アメリカの眼科学会や小児学会、糖尿病協会が推奨しているガイドラインが適切かどうか評価することを目的としています。

研究の対象

研究対象となったのは、アメリカのマネージドケアに登録されていて、かつ最近1型糖尿病または2型糖尿病と診断された21歳以下の4,008人の若者です。糖尿病網膜症のリスクの予測因子としては、年齢、糖尿病発症からの日数、性別、人種、民族、世帯収入、HbA1cを検討し、適宜眼科の受診を続けながら平均3年、最長13年間追跡調査しました。

さて、糖尿病網膜症は一体どんな要因によって影響を受けるのでしょうか。

 

糖尿病網膜症のリスク因子は糖尿病の型、HbA1c、発症からの日数

1型糖尿病2240人、2型糖尿病1768人のうち、調査を始めてから3年後に糖尿病網膜症の診断を受けたのは計578人で、1型糖尿病で20.1%、2型糖尿病で7.2%でした。さらに6年後まで追うとで1型糖尿病で27.6%、2型糖尿病で8.6%、8年後では1型糖尿病で31.2%、2型糖尿病では10.3%まで上昇しました。

発症の年齢は、1型糖尿病の方が早く、中央値(全てのデータを小さい順に並べた際、中央にくる値)は1型糖尿病で14.2歳、2型糖尿病で20.4歳でした。

また、HbA1cの値が1あがると、糖尿病腎症を合併する危険率が、1型糖尿病で20%、2型糖尿病では30%上昇しました。また、検査値に限らず、1型糖尿病では1年経過する毎に危険率が4.6%上昇しました。

性差として、2型糖尿病では女性と比べ男性では122%も危険率が高いことが分かりました。一方、人種、性別、世帯収入では有意な差は得られませんでした。

 

糖尿病網膜症のリスクを下げるために早めに眼科を受診

今回の研究で、糖尿病発症から3年後には18.0%、5年後には24.7%の割合で糖尿病網膜症を発症することが分かりました。つまり、時間が立つにつれ発症のリスクが上がるということです。

現在の糖尿病診療ガイドラインでは糖尿病発症後3~5年後に眼科受診を勧めていますが、これは3〜5年の間に眼科を受診すれば安全、という意味ではありません。糖尿病ガイドラインをよく読むと、以下のようにも書いてあります。

「糖尿病性網膜症は、糖尿病の罹病期間が長くなると発症の危険性が高まるため、一度眼科を受診し、異常がなくても定期的に受診することが重要です。」

糖尿病網膜症は、みなさんの認識よりもはるかに一般的なもので、決して珍しい合併症ではありません。全員が罹るというものではありませんが、視力を脅かす病気の進行を防ぐためには、「ガイドラインに3~5年と書いてあるから3~5年経つまでは眼科に行かなくて良いんだ」ということではなく、定期的な眼科受診によって日頃から目の状態を確認しておくのが望ましいでしょう。

また、糖尿病網膜症は自身で検知できるような症状がないままに進んでいくこともありますので、何かあったら眼科に行けばよいと考えていると、知らない間に症状が進んでいた、ということにもなりかねませんので注意が必要です。

【参考文献】
Wang SY, Andrews CA, Herman WH, et al : Incidence and Risk Factors for Developing Diabetic Retinopathy among Youths with Type 1 or Type 2 Diabetes throughout the United States.
http://www.gankaikai.or.jp/press/pdf/2005.pdf

 

 

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