睡眠時無呼吸症候群の手術は、名医だと治療費まで差が出る!【米国論文】

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[投稿日] '17/07/02 [最終更新日] '18/03/18 833views
睡眠時無呼吸症候群の手術は、名医だと治療費まで差が出る!【米国論文】

いびきがひどい人は睡眠時無呼吸症候群を疑って

睡眠時無呼吸症候群とは眠っている間に無呼吸、あるいは浅い呼吸になってしまう病気のことで、SAS(Sleep Apnea Syndrome)とも呼ばれています。寝ているあいだのいびきがひどい場合、SASの可能性がありますので要注意です。

なお、無呼吸とは「10秒以上呼吸をしていない状態」を指します。平均して1時間あたり5回以上の無呼吸があり、日中の眠気や全身のだるさを伴う場合には睡眠時無呼吸症候群と診断される可能性が高いです。

 

いびきや呼吸が止まってしまう原因は気管が細くなっているか、脳の機能障害によるもの

睡眠時無呼吸症候群は下記の理由によって引き起こされやすいと言われています。

  • 肥満により顎や首に脂肪が多い、または病気で扁桃が肥大してしまっている
  • 顎が小さいことで、睡眠時に舌が咽頭部へ落ち込んでしまう
  • 呼吸中枢の機能異常によって呼吸運動そのものが不安定となってしまう

睡眠時無呼吸症候群は気道閉塞や脳の機能異常が原因で起こり、無呼吸による酸素不足から心拍数や血圧の上昇を来たし、種々の心疾患を引き起こすため、睡眠時無呼吸症候群の原因を医師にしっかりと診てもらい、出来るだけ早くから適切に治療を受ける必要があります。

 

気道を広げることで、睡眠時無呼吸症候群は軽減できる

睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療は、以下の3つが挙げられます。

  • CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法):鼻から口までを覆う専用のマスクを介して、空気を送り気道を広げる治療法です。睡眠中にマスクから空気が一定の圧で送り込まれることで、睡眠中に喉がふさがってしまうのを防ぐ効果があります。
  • マウスピース:マウスピースを装着し、下顎を引き上げることで気道を拡張させます。いびき症や軽症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんに有効な治療法です。
  • 外科的手術:狭くなったのどの粘膜を手術により切り取る方法です。物理的にのどの空間を広げます。

睡眠時無呼吸症候群の原因が肥満である場合などは、減量が非常に有効となる場合もあり、生活習慣の改善が治療に結びつくのですが、そうでない場合にはCPAPやマススピースを介した治療、または手術が必要になることもあります。手術が必要かどうか、経験豊富な医師による手術適応の有無を的確に判断してもらうことが重要です。

 

睡眠時無呼吸症候群の手術件数と治療成績には関係性があるのか?

今回ご紹介する論文では、睡眠時無呼吸症候群の手術件数と治療経過や費用に関係性があるかどうかが検討されています。本研究では、アメリカの診療報酬情報データベース(HCUP-NIS、2007年版)に集積されたデータのうち、閉塞性睡眠時無呼吸症候群で手術を受けた患者を対象としており、1988年から2007年までの20年間に行われた24,298件の手術について調査が行われました。

また、本研究では1年間に医師が執刀した睡眠時無呼吸症候群の手術件数に基づき、医師を分類し、手術による死亡リスク、入院期間の長さ、入院治療にかかる費用の3点について比較検討されています。

医師の分類方法

  • 年間手術件数が多い医師(年間5件以上)
  • 年間手術件数が普通の医師(2-4件)
  • 年間手術件数が少ない医師(年間1件)

また病院ごとの手術件数についても、3つのグループに分類され、同様の検討が行われています。

病院の分類方法

  • 年間手術件数が多い病院(18件以上)
  • 年間手術件数が普通の病院(6-17件)
  • 年間手術件数が少ない病院(5件以下)

 

睡眠時無呼吸症候群の手術では、年間手術件数が多い医師・病院ほど治療効果が高く、治療費も低くなる

分析の結果、睡眠時無呼吸症候群の年間手術件数が少ない医師の術後死亡数は「58人(0.48%)」であったことに対し、年間手術件数が多い医師は「10人以下」であり、術後死亡のリスクが低減できることがわかりました。また入院期間の長さは、手術件数の少ない医師が執刀した場合「約17時間」でしたが、手術件数の多い医師は「約9時間」と8時間程度短くなることも示され、睡眠時無呼吸症候群の入院治療にかかる費用は年間手術件数が少ない病院だと約122万円、年間手術件数が多い病院では約110万円と平均12万円程度(1ドル=110円で計算)低くなることもデータから判明しました。

さらに1施設あたりの手術件数で比較した結果から、件数の多さと治療成果は相関があることも明らかとなりました。睡眠時無呼吸症候群の年間手術件数が多い病院の術後死亡数は70人(0.29%)ですが、年間手術件数が少ない病院では4人(0.09%)であり、手術による死亡リスクが約1/3になることが示されました。また、病院別に見た治療費についても、同様に年間手術件数が多い病院で平均10万円程度低くなることもデータから明らかとなっています。

これらの結果から、睡眠時無呼吸症候群の年間手術件数が多い名医や病院ほど手術に伴う死亡リスクが少なく、短い入院期間かつ少ない費用で治療を受けられることがわかりました。

 

睡眠時無呼吸症候群手術の名医は年間手術件数を基準に選ぶと良い

今回紹介した論文の結果から、睡眠時無呼吸症候群の年間手術件数が多い医師は、少ない医師に比べて手術成績が良い名医であることがわかりました。また年間手術件数が多い病院ほど、睡眠時無呼吸症候群の手術成績が良いことも明らかとなりました。

今回の論文はアメリカ国内での治療が対象となっており、日本人との体格差など違いはあるかもしれませんが、睡眠時無呼吸症候群の経験症例数が多い病院や医師ほど、手術による治療成績が良くなる結果は参考にしても良さそうです。

睡眠時無呼吸症候群で手術の適応があると診断された場合には、手術の実施件数を基準として、睡眠時無呼吸症候群の名医あるいは睡眠時無呼吸症候群の経験が豊富な病院を探してみてはいかがでしょうか?

 

 

参考文献:Surgical Treatment of Sleep Apnea: Association Between Surgeon/Hospital Volume With Outcomes. Laryngoscope 124:320-328, 2014

 

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