「かかりつけ医」の役割ー医療機関分類①

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[投稿日] '15/08/24 [最終更新日] '18/03/18 937views
「かかりつけ医」の役割ー医療機関分類①

“いつもの先生”

かかりつけ医は、「身近な地域で日常的な医療を受けたり,健康上の相談ができる医師」と定義されます。何らかの慢性疾患(高血圧や糖尿病,高脂血症など)をお持ちで定期的に受診されている方は、「ああ、いつものあの先生のことね。」と思い浮かぶのではないでしょうか。その通りでして、かかりつけ医とはざっくり言うと”いつもの先生”です。病院(20床以上の医療機関)にかかりつけ医がいる場合もありますが、ここでは、クリニック・診療所(20床未満の医療機関)の医師を想定してお話します。

 

 クリニックの特徴

まずは、かかりつけ医が医療行為を行う場所、”クリニック”の医療機関としての特徴をお話します。医療機関をうまく使い分けるうえで重要なことなので、しっかりおさえておきましょう。

病院と比較した主な特徴は、①掲げている診療科が少ない(個別化されている)、②実施できる検査・治療が限定的、であることの2つです。

①掲げている診療科が少ない

クリニックは、ほとんど全ての科が揃っている総合病院と異なり、大抵は1つか、多くても2つ3つの科の診療しか行っていないことが普通です。眼科クリニックは目の病気だけに対応し、内科クリニックでは整形外科的な病気には対応できないといった具合です。ただ、医師は基本的には全ての診療科の医療を学んでいますので、「専門は外科だけど、一般的な内科疾患は対応するよ」ということで内科・外科を標榜(その科の疾患を診れますよ、という表記)したクリニックや、内科・小児科を標榜したクリニックもあります。また、専門科の異なる複数の医師が診療しているクリニックでは多くの科を標榜していることもあります。受診する際には、そのクリニックがどの科を標榜しているのかは必ず確認しましょう。

診療できる科が少ないクリニックですが、いついっても同じ医師が診療することが多いというメリットがあります。総合病院では、診療科の数、医師の数が多く、同じ診療科であっても曜日・時間帯によって担当する医師が違うことがほとんどです。受診の度に担当医が替わってしまうと、治療の一貫性を保つことが難しいですし、何度も同じ話をしなければならないこともでてくるでしょう。毎回”いつもの先生”が診てくれることで、このようなことを避けられるのです。このことが、かかりつけ医をクリニックに求める最大の理由となります。

②実施できる検査・治療が限定的

クリニックですので、一般的には病院ほど高度な医療設備はありません。簡単な尿検査や血液検査、検査キットを用いた感染症検査(インフルエンザのチェックなど)は実施しているクリニックが多いです。ただし、血液検査の設備を院内に保有している場合と、外部に委託している場合(採血はクリニックで行い、その血液を検査会社に持って行って検査する)があり、後者では結果が出るまでに数日かかる場合もあります。X線検査では、いわゆるレントゲン検査は施行できるクリニックもありますが、CTやMRIを置いていることは極まれでしょう。超音波検査(エコー)、内視鏡検査はクリニックによっては実施しています。治療面では、薬の処方や簡単な処置(消毒、縫合など)は実施していますが、大きな手術は通常行いません。大抵の設備は揃っている病院と比較して、できる検査・治療が少なく、クリニックによって差が大きいことが特徴ですので、受診目的に応じて前もって確認する必要があります。

この点のメリットとしては、クリニックでは、診療行為が限られている分、患者一人あたりに必要な診療時間はばらつきが少なくなり、一般的には大病院より待ち時間が短くなります。

 

かかりつけ医の役割

次に、クリニックで診療しているかかりつけ医の役割をお話します。

150808_かかりつけ医の役割

①比較的安定した慢性疾患の継続的診療

高血圧や糖尿病、脂質異常症、安定した喘息などは、今すぐ重大な症状はなく、命に関わるような状態ではありません。それでも、定期的に診察し、療養指導を行い、薬を処方する医師がいなければなりません。長期間の診療が必要な患者を継続的に診ていくということがかかりつけ医の最も重要な役割でしょう。

②軽症急性疾患への対応、重症患者の紹介

大病院の役割は、重症疾患に対して専門的な診療を行うことにあります。大病院がその役割に専念できるよう、クリニックで対応できる疾患はクリニックが診る、ということが医療体制上求められるかかりつけ医の役割です。クリニックで実施できる診療行為は限られていることはお話しました。かかりつけ医は、自分のクリニックでは対応できないと判断した場合、高次の医療機関に患者を紹介することになります。患者の判断で紹介状を持たずに大病院を受診してしまうと、大病院の外来は本来大病院の機能を必要としないかもしれない患者で混雑してしまいます。かかりつけ医が患者の重症度を判断し、適切な高次医療機関へ紹介することで、各医療機関がそれぞれの役割を効率的に果たすことができるのです。

③継続的な保健指導と疾病予防

健康診断などで、「ちょっと血圧が高め」「ちょっとコレステロールが高め」という場合があります。現時点では薬を飲んだり、手術を受けたりするような病気ではないので、大病院を受診する必要はありません。でもそのままほっておくと、将来重大な疾患につながる危険があります。そのようなとき、あなたの健康診断結果、仕事環境、食生活などをトータルで判断して、適切な保健指導を行う、つまり、病気の予防のためにどのようなことに気をつければよいかを教えるのもかかりつけ医の役割です。

 

健康なときから”いつもの先生”がいると安心

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普段健康な人は、医療機関を受診する理由としては「風邪を引いたとき」、「ちょっとお腹をこわしたとき」など突発的な事情がほとんどだと思います。その都度、そのとき便利なクリニックを転々と受診しているのではないでしょうか?もちろん、職場に近い、そのときすいていた、などの利便性も重要だと思います。ですが、「ちょっとした風邪だと思っていたら、肺炎だった」「お腹の調子が悪いと思っていたら盲腸(虫垂炎)だった」ということもありえます。あなたを初めて診る医師は、あなたの既往歴(持病)の具合も知らないでしょうし、今の症状が普段のあなたにとってどのくらい重症なのかを判断することも難しいかもしれません。あなたのことをよく知っている“いつもの先生”だからこそちょっとした変化に気づけたり、必要な場合には高次の医療機関へ紹介したりするという、かかりつけ医としての機能を果たすことができるのです。信頼できるかかりつけ医をみつけておくことは、将来重病を患ってしまったときに慌てない・困らないための備えになるのではないでしょうか。

 

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