「高度医療機関」の役割ー医療機関分類③

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[投稿日] '15/09/07 [最終更新日] '18/03/18 3,417views
「高度医療機関」の役割ー医療機関分類③

”大きな病院”

高度医療機関とは、その名前の通り、高度な医療技術を必要とする疾患・患者に対応することができる病院です。かかりつけ医や一般病院の先生から、「うちでは対応できないから大きな病院を紹介しますね」と言われることがありますが、その“大きな病院”がつまり高度医療機関です。

 

高度医療機関の特徴・役割

一般病院はクリニックに比べて、掲げている診療科と、実施できる検査・治療が多いと解説しましたが、高度医療機関はさらにその機能が強化されています。

CTやMRIといった検査設備はもちろんのこと、重症患者を診るための集中治療室(ICU)、白血病治療などで必要となる無菌室が備わっていたり、一般病院とは比べ物にならない数の手術室を保有していたりします。胃カメラや大腸カメラを行う内視鏡室、心臓カテーテルを行う設備なども充実しています。

 

advanced hospital

 

また、高度医療機関は基本的に一般病院に比べて1病床あたり、患者1人あたりの医療従事者が多いのも特徴です。肺炎や虫垂炎(盲腸)で一般病院に入院中は、1日に2・3回、看護師が検温などの回診を行えば十分かもしれませんが、集中治療室で治療中は、24時間体制で患者の様子を見守る必要があります。これはもちろん、モニターなどの機械の力を借りながら行うのですが、それでも一般病院に比べてマンパワーが必要ことは想像できると思います。医師の数も多く、一般病院では胃だろうが大腸だろうが肝臓だろうが、一人の消化器外科医が担当しているということもありますが、高度医療機関では胃・大腸・肝臓のそれぞれを専門にする外科医が複数人いることが普通です。

高度医療機関の役割は、これらの潤沢な設備・マンパワーを活かして、高度な医療を提供することです。

例えば、生体肝移植。虫垂炎の手術は、1つの手術室と数人のスタッフで行うことができますが、生体肝移植は少なくとも2つの手術室と、医師だけでも多くの人数が関わらなければ実施できません。

生体肝移植はやや特殊すぎるかもしれません。別の例を挙げると、治療法の確立されていない(いわゆる診療ガイドラインが存在しない、診療ガイドラインに関してはこちら)疾患では、1人の医師が独断で治療を進めるわけにはいきません。何人もの医師が自分の知識・経験を活かして相談しながら診療を進めるのです。これも、その分野の専門医が複数いる高度医療機関だからできることです。

高度医療機関の別の役割として、臨床研究を行うことが挙げられます。臨床研究とは、現在行われている治療が本当に最良なものであり標準治療として適しているかを検証したり、新しい治療法や薬が既存のものに比べて優れているのかを検証したりすることです。また、医師を育成したり、高度・専門的な医療を習得したりするための教育機関としての役割も果たしています。つまり、高度医療機関には、目の前の患者に高度な医療を提供するとともに、医療全体の水準を高めていくという役割があるのです。

research

 

高度医療機関を受診する際のポイント

なんだか少し”ものものしい”、または”敷居が高い” 印象を持ってしまう解説だったかもしれませんね。誤解しないでいただきたいことは、高度医療機関といっても、特別な人・限られた人しか受診できないわけではなく、高度な医療技術を必要としている人に分け隔てなく医療を提供してくれます。また、高度医療機関にいる医師も、かかりつけ医も、対象とする疾患・状態、使用する設備や提供する医療技術が異なるだけで、同じ”医者”です。

ただし、かかりつけ医、高度医療機関にはそれぞれ役割があり、繰り返しになりますが、うまく使い分けなければ、あなた自身にムダが生じてしまったり(ムダに関しては別記事で記載していきます)、高度医療機関の機能が果たせなくなってしまったりします。

適切に高度医療機関を受診する方法・機会には以下のものがあります。

①かかりつけ医からの”紹介状”を持っていく

自分で「重症だ、難病だ」と判断して、飛び込みで高度医療機関を受診するのではなく、まずはかかりつけ医を受診し、判断を仰ぎましょう。かかりつけ医が、あなたは高度医療機関を受診する必要性があると判断した場合、紹介状を書いてくれます。場合によっては予約をとってくれるシステムがある場合もあります。紹介状があれば、初診であっても優先的に診てもらえることもありますし、初診時の選定療養費という不要な出費も必要なくなります。

②セカンドオピニオンを求めるための受診

近年の医療事情としては、多くの疾患で治療は標準化されつつあります。それでも、治療の選択は複雑で、同じ状況の患者でも医師によって治療方針が異なる可能性は十分にあります。1人の医師の治療方針に疑問を感じるような場合には、別の医師の意見、「セカンドオピニオン」を聞いてみて、納得のいく治療を受けるということが重要になります。高度医療機関は専門的、先進的な医療を提供する場であり、専門医も多くいることから、セカンドオピニオンを求めて受診するのに適した医療機関といえるでしょう。このセカンドオピニオンというシステムは、医療業界では十分に認知されたシステムであり、現在の担当医に気兼ねすることなく申し出てよいものです。真摯な医師であれば、いやな顔はせず、紹介状を書いてくれるはずです。また、医療機関のなかには、セカンドオピニオン外来という専用の外来枠を設けていることもありますので、前もって確認し、予約するとよいでしょう。

③救急車で搬送される

このパターンは、このサイトをご覧くださっている方には当てはまらないのですが、一応挙げておきましょう。救急車を要請した場合、救急救命士や救急センター医師が、緊急性が高くすぐに高度医療が必要であると判断した場合、高度医療機関に搬送されることがあります。

ambulance

 

どういう病院が高度医療機関とよべるのか

病院の”大きさ”や,医療技術の”高度さ”は曖昧な尺度ですし、「うち病院の医療技術は高度だから」といった主観で高度医療機関を名乗られてしまっては、患者さんは困ってしまいますね。そこで、医療法などの法令に基づいて、医療機関の水準を判定し、その技術・設備の”高度さ”を認定・承認する制度があるのです。

いくつか例をみてみましょう。(あくまで制度化されている高度医療機関の例ですので、以下のような医療機関以外でも、高度医療機関に相当する病院は多くあります)

特定機能病院

高度医療機関の代表格です。「高度の医療を提供する能力を有すること」が認定条件に挙げられており、その他、複数の厳しい基準を満たした場合に、厚生労働大臣の承認を受けて名乗ることができます。東京大学医学部付属病院などの、全国の大学附属病院の本院をはじめ、国立循環器病センターなど、80余りの医療機関が認定されています。

がん診療連携拠点病院

専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の構築、がん患者に対する相談支援及び情報提供を行う能力のある医療機関です。国立がんセンター中央病院、同東病院をはじめ、400余りの医療機関が認可されています。

高度救命救急センター

救命救急センターのなかでも、特に高度な救命医療を提供できる医療機関です。日本医科大学付属病院高度救命救急センター,杏林大学医学部付属病院高度救命救急センターなど、30余りの医療機関が認定されています。

 

 

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